2024.02.26 |縫製士の技術を学ぼう。 今治タオル縫製士養成所開校

縫製士の技術を学ぼう。
今治タオル縫製士養成所開校

廃校した小学校に、
タオル縫製士養成所を設立

2023年9月、今治タオル工業組合は、廃校した城東小学校の理科室を活用し、タオル縫製士養成所を開校しました。
「縫製士の養成事業は、以前に県の協力を得てやっていたことがあるんですが、その当時はだんだん応募者が少なくなって、県が実施する最低人数5人が集まらなくなり、終わってしまいました。ここ最近、さらに人手不足になったので、昨年、再び県にお願いしてヘム縫い養成講習を実施したのですが、やはり県の施設はいろいろと制約があって運用が難しかったのです。それで、今後は我々独自にやってしまおうと考えました」(今治タオル工業組合 木村忠司専務理事)
そんな流れで、2023年8月、「タオル縫製士養成所」をメーカーの新人の方対象にトライアル実施をし、9月からは一般の方も受け入れて開校しました。昼の部は、月水金の9日間、そのうち1日は午前2時間と午後2時間。夜の部は、火木の18:00-20:00という時間帯に講習をしています。地元のニュースで報道されたこともあり、さまざまな年代の方々や、母娘で一緒に通う方など、幅広い層の方が通っているそうです。

「人口減少と人手不足に対応し、今後タオル業界を持続発展させるためには、大きくは機械化が必要です。しかし、今治の品質の高いタオルを作るには、なかなか機械だけではできない部分もあります。それで機械化の促進と縫製士の育成、両輪でやっていこうと考えています」(木村専務)

9日間でプロフェッショナルを
目指すプログラム。

縫製士養成所の講師を務める村上雪美先生にお話を伺いました。
生徒さんはどういう方が多いのですか?
村上雪美先生(以下、敬称略):昼夜2部制なのですが、この昼の部は、一般の方4名と、タオルメーカーに内定決まっている方が2名、合計6名です。内定しているお2人は、メーカーさんから派遣されてきています。
一般の方は、いずれタオル工場に勤めたいという希望があるのでしょうか?
村上:少なくとも3名の方はそうですね。
昼と夜の2回とのことですが、夜のコースには男性もいらっしゃるんですか?
村上:はい、昼も最初はいらっしゃったんですが、体の調子が悪いとリタイアされました。でもこの仕事自体、女性が多いので、習う方も女性が多いですね。タオルを一枚一枚折ったり、合わせたり、セッティングしたり、縫ったり、畳んだり、という作業の内容が、伝統的には女性向きだとされてきました。実際は男性でも得意な方もいるし、女性でも苦手な場合もあると思うので、これからは広くいろんな方に入ってきてほしいとは思います。
9日間18回のプログラムとのことですが、その期間である程度技術は身につくのでしょうか?
村上:はい、9日間でできる前提でプログラムは組んでいますが、実際は十人十色です。熟練の早い方もいれば、地道に覚えていく方もいます。最初のスタートは同じですが、個人差が出てくるので、一人一人生徒さんのペースに合わせてフォローしながら進めています。
先生は、どういう経緯で講師をなさることになったのでしょうか?
村上:実家が自営業でタオルメーカーを営んでいて、そこで働いていたのですが、両親が亡くなったときに、組合の木村専務から声をかけていただきました。メーカーをやっていた知見で、縫製だけでなく、タオル作り全体のことがわかっているというのもありまして。
なるほど。それは講師に向いていますね。こういう作業はどのメーカーも同じなのですか?
村上:基礎は同じです。工業用ミシンの電源のスイッチから、基礎を全部学んで、端切れで練習して、商品が縫えるところまでやります。生徒さんには、メーカーに就職して、タオル縫製の技を深く身に付けていってほしいです。
大量のタオル生地が積み上げられていますが、すべて講習に使うのでしょうか?
村上:はい、1人が9日間の講習で縫う量は、フェイスタオル150枚、バスタオル150枚くらいあるので…。講習に使うタオルは、各メーカーさんからお借りし、縫い終わったものはメーカーへ返却。自社販売やイベント販売などに使われるそうです。
それはすごい量ですね!
村上:だからメーカーさんからの協力がないとなかなか難しいですね。業界全体で育成をしていこうという取り組みです。
なるほど。ありがとうございました。

各メーカーさんからお借りした練習用のタオル

30代から70代まで、
さまざまな生徒さんたち

それでは、生徒さんにも話を聞いてみましょう。
「全くの初心者で、不器用なんですが、やってみないとわからないことがあるなと実感していて楽しいです」
というのは、生徒のAさん。結婚・出産を機に今治へ移住。6年こちらに暮らして、小学6年生と生後9ヶ月のお子さんがいらっしゃるそうですが、ママ友の生徒Bさんに誘われて、タオルメーカーで働いてみることに。そのメーカーから派遣されて、こちらの学校に通っています。

友達同士で一緒に通うお2人。今後は同僚になります。

また、72歳の生徒さんも。
「転勤族で、かなり前ですが、横浜から移住してきました。遠方の友達に、タオルをあげるとすごく喜ばれるんですよ。それで携わってみたいなと思ったのですが」
それは素晴らしいですね。
「ミシンは50年近くさわっていなくて…先生にはよくご指導いただいたんですが、若い人より上達が遅くて」
ご自身のペースで頑張ってくださいね。
他にも、少しだけミシンをやったことがあるけれど、自己流だったので学びたかったという方、会社に就職するのではなく内職で仕事できたらいいなと思っている方など、様々な方が通われていました。ここからどんどん未来の縫製士さんが育っていくのですね。


タオル縫製士養成所受講者募集
https://itia.or.jp/news/post-1654/

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