2022.04.28 |技能を高め合い、もっといい産地へ 今治タオルアカデミー開講|今治レポートVol.15

技能を高め合い、もっといい産地へ
今治タオルアカデミー開講

テクスポート今治にて開講式開催。

去る2022年4月12日、今治タオル工業組合は、「今治タオルアカデミー」を開講。4月15日に開講式がテクスポート今治にて行われました。

開講の目的は、タオル製造の基礎・基本を習得し、応用改善のできる技能者を育成すること。対象は、組合員企業の経営者や従業員で、職種は問わず。講習は、夜間にテクスポート今治内の今治タオル工房館などで行われます。

開講式は、今治タオル工業組合・正岡裕志理事長の挨拶から始まりました。

「今治タオルアカデミーは、今治産地のものづくり力を継承していこうと、2017年ごろから取り組んできた業界独自の人財育成システム。タオル製造の『基礎・基本』を徹底して学び、産地の次世代を担う技能者の輩出につなげていきます」(正岡理事長)



アカデミーの概要説明、講師陣の紹介のあと、愛媛県知事代理の山本泰士氏、今治市長・徳永繁樹氏などの祝辞をいただきました。

佐藤可士和氏からビデオメッセージも。

また、今治タオルブランディング・プロデューサーの佐藤可士和氏は、ビデオメッセージにより挨拶。



「今治タオルブランドをますます発展させるには、タオル作りの技能によるイノベーションが不可欠になります。僕が今治タオルのブランディングを引き受けようと思ったのは、初めて今治タオルを使ったときに本当に感動したからです。『すごい、こんなタオルあったんだ』と、心の底から驚いたのをいまでもはっきり覚えております。僕が体験したような素晴らしい驚きを、世界中の人に届けてください。そして将来、タオルマイスターとして、この技能を後世に伝えていってください」と受講者へエールを送りました。



最後は、須賀健夫氏(株式会社トップファクトリー今治)が、受講者を代表して「全力をかたむけて一心に技能習得に励み、タオル業界をけん引していけるよう立派な技能者になりたい」と決意表明し、開講式は終了。その後、授業が行われる今治タオル工房館の見学会が行われました。

タオル織機や整経機などが並ぶ工房館


受講者は、13人の応募があったところ、コロナの感染対策などで抽選により5人に絞られました。そのなかには、このWEBサイト内の記事「タオルストーリー」でも取材させていただいた渡辺パイル織物株式会社役員の渡邊文雄氏の姿も。

渡辺パイル織物の渡邊氏も受講者として出席


「僕は営業出身なので、工場の人たちと設計の話をするときに、なかなか詳しい話までできないこともあり、先代にも職業訓練校(現・愛媛中央産業技術専門校)に行ったらいいとも言われていたのですが、時間がなくて行けずにいました。そんななか、このアカデミーの話があり、こちらは夜間で、仕事が終わってから通えるので、これはいいと思って応募しました。技術を学んでいけば、ものづくりもおもしろいものができるのではないかと思っています」(渡邊氏)

ゆくゆくは中高生向けや、
感性・デザイン系の講座も。

今治タオル工業組合は、アカデミーを5年もの歳月をかけて練り上げてきました。

「国内の人口減少や少子高齢化など環境は大きく激変し、ライフスタイルが変化するスピードも速くなっているいま、今治タオルが生き残っていくためには、より高度な技能の継承と付加価値の高い商品開発を続けなければなりません。そのためには、タオルの性能はもちろん、人の琴線にふれる個性的で感性価値・情緒価値で差別化する必要があります。以前は各社がやってきた人財育成も、昭和40年以降は分業化が進み、さらにバブル崩壊後は余裕がなくなり、タオル作り全体を俯瞰するようなカリキュラムによる人財育成ができなくなっている背景もあります。そんななか、遊びながら総合的な工程を学習し、研究していけるような場を、組合から提供したいと考えました。課題対応力や独創的な商品開発のアイデアも、そうした基礎・基本をしっかりやることで習得できるのではないかと。将来的には、そういう方々にタオルマイスターを目指して頑張ってほしいと思っています」(今治タオル工業組合 木村専務理事)

例えば、タオル織機やジャカード機など、タオル作りに必要な機械やシステムを構造から理解していれば、もっと斬新なものづくりのアイデアが出るかもしれない。そんな考えで、機械を分解したり、自分の専門外の知識を遊びながら学べる場を作り、さらにそこに集まった講師や受講者が交流し、刺激し合うことで、業界全体が活性化していくのではないか。それがこのアカデミー開講の根底にある想いでした。



「カリキュラム構築は、タオルマイスターにお願いし、どのような狙いで、どのような内容のことなのか、現場の知恵でゼロから作っていただきました。座学・実践・見学で構成し、「わかる・できる」をテーマにした講習を行なっていきます。講師は、タオルマイスターや現役の工場長など熟練の技術者ばかりです。基礎・基本から応用まで技能レベルに応じて、Silver(初級)コース、Gold(中級)コース、Platinum(上級)コースと、3つのコースを用意しています。またゆくゆくは技能系だけでなく、感性・デザイン系も開講していく予定です」(同組合 武田氏)

「もうこれからは、一社だけでやっていく時代じゃない。ベースの技術は、みんなで高め合っていくことで、もっといい産地になると思っています。そのうち社会貢献として、小中学生にも広げ、本物の感性を育てるような授業をしてあげたい」(木村専務理事)

今治タオルの未来が、またここから始まります。

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