2021.08.12 |タオルって、魔法のじゅうたんみたい。

タオルって、魔法のじゅうたんみたい。


室井滋(むろいしげる)

Muroi Shigeru

富山県生まれ。1981年映画「風の歌を聴け」でデビュー。映画「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」などで多くの映画賞や、2012年喜劇人大賞特別賞、2015年松尾芸能賞優秀賞を受賞。2021年映画「大コメ騒動」に出演。
近刊エッセイ『ヤットコスットコ女旅』(小学館)他電子書籍化含め著書多数。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催中。


タオルがあるだけで、
気持ちのやわらぎ方が違う

今日は、今治タオルの名誉タオルソムリエでもある室井さんにお話を伺います。すごくタオルお好きだそうですね。
室井滋さん(以下、敬称略):私、タオルが好きすぎて、ずっとお風呂の脱衣所に、サウナみたいにタオルを並べるのが夢だったんですよ(笑)。
なかなか個性的な夢ですね(笑)。
室井:バカみたいって言われるんですけど(笑)。で、家を建てたときに、それを実現しました。これ、写真もあるので見てください。

室井さんご自宅の脱衣所に並べられたタオル



すごい!お店みたいですね。カラフルでキレイです。本当にタオルお好きなんですね。
室井:はい。撮影現場にも、大判のタオル、膝かけになるタオル、小さなフェイスタオルの3点セットを必ず持っていきます。タオルがないと「どうしよう」って不安になるくらい。

私たちの仕事って、早朝に出かけて夜中に帰ってくることが多く、ロケ先で、「生活する」みたいな状況になることが多いんですね。待ち時間も長いし、食事も2~3回しますし、たくさんの俳優さんと同じ場所で過ごすこともあって、場所によっては大きな会議室で、畳敷きの場所で過ごしてくださいと言われたりすることもある。そういうとき、大判のタオルがあると、自分の陣地というか、空間を作れるんですね。ちょっと横になりたいときとか、台本をくるくるタオルで巻いて枕がわりにしたりとか。食事のときはヘアメイクさんが床屋さんみたいに巻いてくれて、そうするといちいち衣装着替えなくてよくなります。
だからタオルって私たちの仕事になくてはならないものですね。魔法のじゅうたんみたいだなって。
魔法のじゅうたん(笑)。いい表現ですね。
室井:絵本ライブで旅することも多いのですが、一人でタオルと一緒に移動していますね。いろんなホテルに泊まるんですけど、枕の高さがあわなかったりするでしょ。そういうとき、ホテルのバスタオルを敷いて、好きな自分のタオルを乗せて眠ります。初めての場所で、肌触りとか、自分の匂いが残っているものがあると安心できるんですよね。幼児と一緒です。

そういう意味で、たとえば災害に遭ってしまって被災される方々も、愛着のあるタオルが一枚あるだけで、気持ちのやわらぎ方が全然違うんじゃないかなと。
緊張を強いられる現場に、こういうタオルがあると、くつろげるし、リフレッシュできる。タオルにはそういう役目があると思うんです。

シーツは毎日洗うの大変だけど、
タオルなら洗える。

今日は、そんな室井さんの実際使われているタオルを持ってきていただいたのですが。
室井:はい。このタオルは、昔、青山のお店(今治タオル南青山店)で、3点セットで買ったものです。

室井さんの私物の今治タオル 同じ柄のものをそろえて購入



もうだいぶ前のものですよね?
室井:7~8年前ですかね。
そのわりにすごくキレイでびっくりしました。
室井:乾燥機にかけないようにしたり、洗い方は気をつけています。
柄物がお好きなんですか?
室井:柄物は好きですね。カラフルだったり、おもしろいデザインが大好きです。普通のタオルでも、フチにポイントがあったりするものをよく選びます。撮影現場に持っていくときに、他の皆さんのタオルと間違えられないように、目印になるようなものを選びますね。

私、銭湯が大好きで、家の近くに12時までやっている銭湯があって、髪の毛をターバンみたいにして、そのままコンビニに寄ってアイスクリームを買ったりしてるんですが、お洒落なタオルだと、みんなMISIA(ミーシャ)みたいねって言ってくれます(笑)。家に帰ってタオルを取ると、ドライヤー当ててなくてもだいぶ湿り気が取れていたりして、いいですよ。今治タオルは吸水性がすごくいいので、家に帰るとほとんど髪、乾いちゃってますね。

あと白いものでも、こういう凹凸があって、柄が浮き出ているようなものに最初に目がいきますね。

室井さんの私物の今治タオル パイルの浮き出たデザイン



今治タオルとの出会いはいつごろだったんですか?
室井:最初どこで見たのかな。あのロゴマークがかわいいと思って。白いタオルにこのロゴがついているだけでだいぶ違いますよね。その頃、今治タオルが少し知れ渡ってきて、東京でも自然に手に入るようになった頃で、製法が独特で、お洗濯して、パンパンってやったときに乾き方が全然違うというのをテレビか何かで見て、いいなあと思ったのもありましたね。それで買うようになっていたんですが、立川志の輔さんのご推薦で、名誉タオルソムリエのお話をいただいたんです。
そのエピソードは、以前、タオルソムリエニュースに書いていただきましたよね。(※)。いつもどこでタオルを購入するんですか?
室井:デパートにもけっこう行きますし、青山のショップにも行きますよ。この前もパジャマを買ったり、髪の毛に巻くターバンみたいなものを買ったりしました。デパートにも今治タオルのショップ増えましたよね。
今治タオルのオフィシャルな店舗は、都内だと南青山だけですが、メーカーさんのお店は増えましたね。101社のメーカーがあるので。今日はオフィシャルストアの店長が持ってきたタオルもあります。室井さんがお好きそうなものを見繕ったそうです。
室井:あ、この緑のタオル、いいですね。こういうガーゼの肌触りがもともと好きなんです。ガーゼって、ハンカチなんかでも、ちょっと普段使いな感じでしょ。柔らかくて、くしゃくしゃにしても大丈夫な感じで、一番実用的な気がする。薄いけれど吸水性が良くて使い勝手がいい。

室井さんが好きだというガーゼ地のタオル(上)と⼤判のタオル(下)



室井:あとは大判のタオルがすごく好きなんですが、このグレーのタオルは素晴らしいですね。肌触りが気持ちいいし、柔らかくて密度が濃い。これ、タオルケットみたいに使えますよね。わたし、下に敷くという使い方をよくするんです。夏場、忙しくてシーツを毎日洗うのはなかなか大変ですけれど、シーツの上にこういう大判のタオルを一枚おくことで、そのタオルだけ洗えば良くなるでしょ。そういう使い方もできますよね。

コロナ禍で書いた2冊の絵本

さきほど絵本ライブのお話も出ましたが、室井さんは絵本をもう何冊も書かれていますよね。この2冊(『会いたくて会いたくて』『しげちゃんのはつこい』は最新のものですか?


室井:はい、コロナで舞台ができなかったりというのもあって、おうちにいる時間が増えまして、こういうときだからこそ、まとまったものが書けるなと。
『会いたくて 会いたくて』は、自分のおばあさんに会いたくても会えないこどものお話でしたが、これはコロナ禍のことを書かれたものなのでしょうか。
室井:コロナ禍のなかで、なかなか会えなくなってしまった人から、私のところに手紙が来たり、メールが来たりということがすごくあったんですね。そんなときじゃなかったら生涯手紙なんかくれないよね、というような人から。
「あのとき言えなかったから今いうね」という文言があったりして。こういう時間が止まったときに、感じることとか思うことがあるんだなと思って、そういう今の気持ちを反映させたものを書きたいと思ったんです。

ただ、書いたきっかけはそうなのですが、あえてそんなにコロナを意識しないようにしている部分もあります。最初はこどもにマスクをさせる絵の想定もしていたんですけど、それはやめようと思いました。コロナじゃなくても、こういう状況ってよくありますから。
ご自身の体験から物を書かれることが多いんですか?
室井:私はいつもそうですね。『しげちゃんのはつこい』も、自分のこどもの頃のいくつかのエピソードを組み合わせて書いたものです。実際はこの男の子に恋していたというわけではないんですが(笑)。


そもそも室井さんといえば、本音をおもしろく書いたエッセイの印象が強いですが、絵本を書かれるようになったきっかけはなんだったんですか?
室井:昔、『むかつくぜ!』というエッセイがヒットしたので、気を良くして、いくつかの連載を執筆しはじめまして、さらに12年もの間、週刊文春にも連載をしていたのですが、あるときそれを卒業することになったんですね。そのタイミングに、不思議なもので絵本のお話をいただいたんです。絵本の世界がわかっていなかったし、どうかなと思ったんですけど、一旦エッセイが終わって寂しかったというのもあって、やってみました。まあ最初は紆余曲折があって、まずキツネの話を書いて持って行ったら、長すぎると言われて。それで絵本のことをいろいろ研究したら、こどもは下ネタが好きだとわかったので、『おじいちゃんのシービンビン』(笑)という尿瓶の話を書いて持っていったんです。そしたら、「デビュー作なのに、大丈夫ですか?」と言われまして(笑)。
おもしろそうですけどね(笑)。
室井:じゃあ自分の話がいいかなと書いたのが『しげちゃん』でした。こどもの頃「しげる」という名前が大嫌いだったので、その話を書いた本なのですが、すごく反響がありまして。震災の年だったので仮設住宅などにお伺いして、朗読する機会をいただいたりしました。そのとき、「絵本ってこんなふうに人と交われるのか!」という発見があったんです。震災とか、世の中で大変なことが起きたときに、俳優って個人では何もできないでしょ。でも絵本ならできるんだって。

そんなふうにして呼ばれることが増えて、絵を描いてくださっている長谷川義史さんと一緒にステージやってみたら、「音楽があったほうがいいね」となったりして、自然発生的にしげちゃん一座ができていきました。見に来た方がまた「うちの街にも」と言ってくださって。だから絵本をたくさん書かなきゃと。
読者は、大人の方が多いのでしょうか?
室井:絵本ライブにいらっしゃるのは、7割は大人の方ですね。奥様方とか若いカップルとかいろいろです。そもそも私の絵本って、お子さんに向けてというよりは、大人の方に向けてる感じですよね。

『しげちゃん』は名前の話で、最初は嫌いだった名前だけど、親からもらった一番の宝物だということに気づくストーリーなんですが、朗読すると、号泣される方もいらっしゃいます。自分の名前のことを思い出して、親への感情が溢れ出すみたいになって。そういう意味で、ご家族を亡くされた方々でも「名前と共に親御さんの想いが残る」ということを朗読で伝えられる。それはとても大切なことだなと。

絵本って何回も読むCDみたいなもんだと思っているんです。話がわかりやすくてシンプルで、自分と重ね合わせられる。そういう魅力が絵本にはあるんだなと。エッセイは毒舌なものが多いので、差し上げることができなかったけれど、絵本は贈り物にできるしね。この前も、『会いたくて 会いたくて』は、富山の老人施設に寄贈させていただきました。会いに行きたいけど会いに行けないから、代わりにこの本を読んでくださいって贈る方もおいでになるみたいです。

ずっと続けてきたことを、
ていねいにやっていく

コロナ禍では、暮らしは変わりましたか?
室井:イベント的なものがだいぶなくなりましたね。この夏くらいからは少しずつ再開される予定ですが。コロナがどういうものか正体が見えないうちは、怖いじゃないですか。だから「やりましょう」と言ってくださる方も少なくて、仕事はそんなふうなんですけど、都内にいると今までみたいに外出しなくなって、下手くそな料理をするようになりました。
お酒もお好きなんですよね?
室井:好きなんですけど、家では一滴も飲まないんです。食べるの大好きなんで、10数万もする炊飯器を買ったんです。47都道府県のお米を炊き分けるというもので、それがあまりに美味しくて、太っちゃいましたね(笑)。

あと、残っている野菜でスープを大量に作って、冷蔵庫に入れておいて、カレースープにしたり、豚肉入れてキムチスープにしたり、味変してご飯の友みたいにして食べたりしますね。スープはそれ1個あると1品確実にあるから、メニュー考えるのが楽になりますよ。


器用ですよね?
室井:ガサツな人間なんですけど、「これやろう」と思ったら速いですね。料理も、レシピ見るとかしないで、自分で全部考えて、どこかで何か美味しそうなそうめんの上に乗っかってる何かを見たら、我流で想像して作ったり。両親が小学校高学年で離婚しているから、祖母と父と3人暮らしの時間が長かったんです。中学生くらいから自分で料理を作ったりしていました。だから、いまでもお炊事の撮影でネギとかバーッて切っていると、「すごいですね」と言われたりします。
今後のお仕事はどんな感じでやっていきたいですか?
室井:ドラマや映画の仕事は勿論ずっと、絵本作りも続けていきたいですね。エッセイの連載も週に2本、月に10本くらい書いていて、3日に1回は原稿書いていますね。あとは富山でラジオのレギュラー2本持っているのと、トロッコ電車のナレーションとかもしていてそれがベースの生活です。しげちゃん一座のステージも、コロナがなければ年間30ステージくらいはしていますね。そうやって続けてきたことがベースにあるので、なるべくていねいにきちんとやっていこうと思っています。
書くことがお好きなんですね。
室井:撮影って共同作業なので、いくら頑張っても全部カットになったりするでしょ(笑)。でも書くことは、1人でできることなので、自分の世界でできますから。それで気持ちの平静を保っていられる部分がありますね。

語りなど声の仕事も好きですね。七色の声が出せるので、エヘヘ。『ファインディング・ニモ』のドリーの声をいただいたりして。だから、絵本も、朗読ができるのがいいなと思って続けています。自分の本だから、どう読もうとわたしの勝手じゃないですか(笑)。毎回、自分の中でこみ上げてくるものが違うので、読み方も変わるんです。一回一回全力で気持ちを込めて読んでいます。ステージって、自分たちだけの力じゃなくて、お客さんの気のようなものが伝わってくるので、無言の気持ちのキャッチボールみたいなものがありますから、それが楽しくてやめられないのかもしれません。
素敵なお話ありがとうございました。お気に召したタオルがありましたら、どうぞお持ちになってください。
室井:えっ!いいんですか!?すっごくうれしい(笑)。ありがとうございます。
こちらこそありがとうございました。

『しげちゃんのはつこい』(金の星社)
https://www.kinnohoshi.co.jp/search/info.php?isbn=9784323074696

『会いたくて会いたくて』(小学館)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09725096
今治タオル 南青山店
https://www.imabaritowel.jp/store#aoyama
室井さんがピックアップしたタオル
・ガーゼのタオル:吉井タオル「ディビジョン8シャンブレー」
 https://towelshop441.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2153452

・グレーのタオル:渡辺パイル織物「MELANGEリラックスブランケット」
 https://www.watanabe-pile.jp/?pid=159469962

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