2021.03.30 |今治から放たれる希望の光、今治ラヂウム温泉本館ライトアップ

今治から放たれる希望の光
今治ラヂウム温泉本館ライトアップ



しまなみ海道の観光振興と、
コロナ収束への祈りを込めて

今治市の中心部に建つ古城のような建物をご存知でしょうか。遠くからも目を引く、多角形の高い塔屋が特徴的なフォルム。国登録有形文化財「今治ラヂウム温泉本館」は、近年、専門家による調査が進み、研究家や建築ファンからも注目を集めている建築物です。2021年2月22日〜3月7日、この今治ラヂウム温泉本館を期間限定でライトアップするイベントが開催されたので、IMABARI LIFEでも取材に行ってまいりました。

ライトアップで浮かび上がる幻想的な建物

 

さっそく、本館玄関入り口にはプロジェクションマッピングの投影が。扉を開ける瞬間もワクワクしますね。

瀬戸内海から湧き上がる泉、温泉の湯気、水流などの癒しと、今治から放つ希望の光を表現。温泉のイメージで暖色系の明かりを中心に構成されています。

次々と変わる光の演出に思わず見入ってしまいました。

このライトアップは、「瀬戸内しまなみ海道×建築文化財 Imabari RADIUS 光・希望・祈り」と題し、今治から放つ未来の希望の光、祈りをコンセプトとしています。ちなみに、ラテン語のRADIUSには「光を放つ」という意味があり、今治ラヂウム温泉の「ラヂウム」の語源だそうです。

扉を開けていざ中へ。目の前に広がっていたのは、銭湯時代の名残のあるかつてのロビー。イベントは、しまなみ海道の観光振興とコロナ収束への祈りを込め、今治ラヂウム温泉が文化庁の支援を受けて企画したもので、今治タオル工業組合も協力しています。ぬいぐるみのバリィさんも出迎えてくれましたよ。

 

浴室を案内していただきました。脱衣場のロッカーなどは当時のまま、マッサージ機なども展示されていてノスタルジックな雰囲気です。

男湯の浴室では、のれんや当時の風呂桶がディスプレイされていました。万華鏡のように輝く光で華やかに演出されています。音楽とともにカラフルな光が360度広がって、とても幻想的。

入り口エントランスはアーチ状、天井は10メートル以上の高さがあるドームになっています。まるで古代ローマの浴場のよう!窓から差し込む明かりで立体感が強調され、厳かで神聖な雰囲気すら漂っています。

よく見ると、壁や柱がところどころ剥がれています。汚れのように見えますが、実はこれ、建築時の壁が出てきているのです。改装した際、元々の壁の上からペンキで塗装したところ、歳月とともにそのペンキが剥がれてきて、中から大理石のような模様が現れたのです。

 

ペンキが剥がれた柱の中から、こだわりの技法がのぞく

 

もともとの柱や壁面は、マーブル技法と呼ばれる大理石に似せた磨き石彫仕上げになっているそうです。これは当時の腕利き左官職人の手によるもの。高い技術を集結させて、こだわりの浴場を造ったことがわかります。このペンキをすべて剝がしたら、全面が大理石に覆われた浴室に見えるのかもしれません。元通りの豪華なローマ風呂が出現したらすごいことですね。

街づくりのシンボルとして
歩んできた歴史

今治ラヂウム温泉本館は、2019年に創建100年を迎えました。長年、銭湯として親しまれてきたものの、その歴史は地元の人にもあまり知られていません。

 

 

女湯の浴室には、大型モニターが設置されている

 

その始まりは、瀬戸内海の芸予諸島大島で材木商を営んでいた実業家 村上寛造氏が、町の中心部に歓楽街をつくろうと、湿地帯を開墾して娯楽場を開設したことからでした。

大正初期、現在の共栄町周辺は湿地帯のレンコン田だったのだそうです。その土地に目を付けた村上寛造氏は、1919(大正8)年地域のシンボルとなるランドマークを建設し、映画館を中心に、浴場、多目的ホール、食堂などを備えた「共楽館」という名の一大レジャーランドを開設します。

浴場施設は、屋根に五角形と六角形を重ねた塔屋を掲げ、背面に2つの八角形ドームを並べたインパクトのある外観。モダンでハイカラな建物に、当時の人たちは驚いたことでしょう。また、人々がこの場所で生活しながら商売ができるように、店舗住宅や子どものための遊び場、市場、公園、郵便局、交番などをつくったそうです。そして、市街地完成の総仕上げとして、1927(昭和2)年に浴場施設を「ラヂウム温泉」の名称で開業します。

 

当時この辺りで頑丈な鉄筋コンクリート造りの建物は珍しかったようです。太平洋戦争期には越智郡郷土防衛隊の本部が設置され、市民を守る拠点となりました。空襲により今治市は中心市街の約8割が焼失しましたが、今治ラヂウム温泉本館は奇跡的に戦火を免れ、空襲直後は病院や銀行などが集まる地域インフラの拠点となります。以来、今治市民の命を守る大切な役割を果たしてきました。

昭和40年代に、三角屋根の建物3階部分を増築し「ホテル青雲閣」を開業。その後、大浴場をサウナ風呂やジェットバスなどを取り入れた近代型銭湯に改築します。こうして長年、人々から親しまれてきましたが、老朽化により2014(平成26)年に浴場を休業、現在は閉館中です。2016(平成28)年に国登録有形文化財に登録後、近代建築と浴場文化の歴史を伝える貴重な遺産として保全活用を目指し今に至ります。

こうして今治ラヂウム温泉の歴史を知ると、時代の流れやニーズに合わせて業態を変えながら、地域の人々とともに歩んできたことがよくわかりました。

約70台の照明で彩られた
初のライトアップイベント

さて、外に出てあらためてライトアップを楽しみましょう。

今回のイベント用に設置されたLED照明は、約70台。時間の経過とともに刻々と青やオレンジ、緑と色彩が変化し、八角形のドーム型の施設が夜の闇から幻想的に浮かび上がります。外観のライトアップは初めての試みだったそうです。建物周辺の道路をぐるりと周ると、ドームや煙突がさまざまな角度で見えてきます。この日も何人もの写真愛好家の方が、カメラを手に撮影を楽しんでいらっしゃいました。

 

 

新居浜市から見に来たという80代の女性は、大正時代の建物がきれいに残っていることに驚いた、と話してくれました。ライトアップイベントのことを知り、片道1時間以上かけて来られたそうです。「負けないように、わたしも元気で長生きしなくちゃ!」「元気をもらった!」と明るい笑顔で帰っていく姿を見て、この明かりが今治から放つ未来の希望の光になっていることに胸が熱くなりました。

「今治のまちの繁栄のために、孫末代まで残るものを」という創業者の想いが込められた、今治ラヂウム温泉本館。幾度の災害や戦禍を乗り越え、今治の人々とともに100年の時を歩んできました。

大正、昭和、平成、時代を眺めつづけた建物が、令和の時代にどんな風に新しい歴史を紡いでいくのか、私たちも楽しみにしています。

今治ラヂウム温泉
国登録有形文化財「今治ラヂウム温泉本館」
〒794-0024 愛媛県今治市共栄町4丁目2-9
https://imabari-radium.com
Mail:imabari.radium@gmail.com

今治ラヂウム温泉100年の歴史などFacebookやYouTubeで公開中
https://www.youtube.com/channel/UC8cDCC8zuJi3-Z0M7VANgyg/
https://www.facebook.com/Imabari.radium/

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