今治市民がつくる夏祭り「おんまく」を、
思いっきり楽しもう。
おんまく。それは、今治の方言で、めちゃくちゃ、いっぱい、思いっきり、という意味。そんな名前を持つ今治の大規模な夏祭り「今治市民のまつり おんまく」の季節がやってきました。
毎年8月の始めの土・日の2日間、今治港とその周辺(商店街と広小路お祭り広場)を中心に、踊りやダンス、打ち上げ花火などの多彩なイベントを行うお祭りで、今年で21回目を迎えます。
特に打ち上げ花火は10,000発と中四国最大規模を誇り、見物客も約20万人。
なんと今治市の人口より多い人たちが訪れるほどの賑わいぶり。
そこで今回のIMABARILIFEは、8/4(土)8/5(月)に開催された「おんまく」を、あふれる熱気と共にレポートします!
屋台、イベント、生演奏。
市民が作り上げる市民のお祭り。
おんまくでは開会の神事を皮切りに、2日間、今治港付近や商店街、お祭り広場などでさまざまな催しが行われます。
商店街では、和太鼓が演奏されたり、ジャズの生演奏が行われたり…「今治市民のまつり」と言うだけあって、たくさんの市民が企画し、運営し、一緒にお祭りを作り上げているのです。
セレモニーの目玉として、両市の特産品を使ったはっぴを作成し、親交の証として交換。今治からは、もちろん今治タオル製のはっぴです!
丸栄タオル制作の今治タオル製のはっぴ。尾道市からは尾道帆布のはっぴを。
両市長がはっぴを着用し、餅まきや振る舞い酒でその場を盛り上げました。これからますます結束して、瀬戸内海を盛り上げていけるといいですね。
田中産業製造のコラボタオル
尾道帆布は一般向けに販売も
16の継獅子(つぎじし)が立ち並ぶ
幻想的な世界
おんまくには「伝統芸能」「踊り」「花火」の3つの柱があり、その中で最も歴史があるのが伝統芸能の「継獅子(つぎじし)」です。継獅子は、愛媛県の無形文化財にも指定されている、全国的にも珍しい伝統行事。人の上に人が立ち、さらにその上に人が立ち、獅子頭をかぶった子どもが獅子舞を演じるという、なかなかアクロバティックなもの。約300年前に行われた伊勢神宮の代々神楽がそのルーツであると言われています。
毎年5月の春祭りでも、市内29神社で継ぎ獅子が奉納されていますが、おんまくではその継獅子が一堂に会するのが見どころ。ドン、ドドンというリズムの太鼓の音と共に、一風変わった獅子舞が始まります。
まずは勢いよく2段に連なる舞い手たち。大人と子供の獅子子(ししこ)が同じ動きをしているのを、かわいい!と思いながら見ていると、あっという間に三継ぎ獅子(3段)に。会場に大きな拍手と歓声が響きます。片足で大人2人分の高さの上に立つ獅子子の姿は勇ましく、気高ささえ感じます。
これは見応えがありますね! 相当練習しないと、これだけの技は繰り広げられません。
この舞を行うために3月半ばから獅子子(ししこ)の皆さんは練習をはじめるのだとか。そんな情熱をかけた獅子子たちがこれだけ並ぶと、すごい迫力です。
総勢16の団体が並び演技する継獅子
どんどん引き込まれて、気づけば暑さも忘れて夢中になって見入っていました。
この継獅子、衣装や踊りも、地区によって違うのだとか。団体によっては、一番上の獅子子の獅子頭から布が広がり獅子になるものや、一度降りてきてから猿やおかめが演目として出てくるものなど、本当にさまざまな種類の舞いが一度に楽しめます。
春祭りではそれぞれの地区でフルバージョンが見られます。お気に入りの団体を見つけて、翌年の春祭りに備えるのもいいですね。
総勢5000人の汗がきらめく、伝統と情熱の踊り。
おんまく3本柱その2。1日目の16時から21時の約5時間、熱く盛り上がるのが「踊り」です。軽快なリズムのなか、自由な振り付けで踊る「ダンスバリサイ」、今治の祭りに欠かせない音頭として踊りつがれている「木山・今治お祭り音頭」の2種類の踊りがあり、地元有名企業や学生など、おんまく祭りを愛する人たちが多くの連を成して参加します。
今治港から市役所前までの通りと商店街を通行止めにして盛大に行われるこの踊り、今年はバリサイに29連、木山・今治お祭り音頭に49連、総勢5,000人以上の人が参加しました。
自由な振り付けで踊りまくる「ダンスバリサイ」
踊りの第1弾は「バリサイ」。日の落ちる前から音楽に合わせて各連の激しいダンスが繰り広げられます。どのチームも、一糸乱れぬ息ぴったりの演技がカッコイイ!
汗のきらめきが見えるくらいの近距離での踊りは圧巻。踊り手のまぶしい笑顔にくぎ付けになります。
ダンスチームばかりではなく、多くの地元企業もしっかりオリジナルダンスを作って参戦。
会社を上げて今治の一大イベントに参加するぞ!という、並々ならぬ情熱を感じます。
髪留めにあみこまれたタオル
実は、このバリサイのルールは、
「衣装の一部に必ずタオルを使うこと」。
タオルを首にかけるだけでもOKですが、チームによっては衣装そのものをタオルにしたり、髪留めなどのアクセサリーやリストバンドにしたり、様々な工夫を凝らしています。
今治タオルとしては嬉しい限りです。
うーん、これはすごい存在感。
なんとダンス未経験からスタートした人もいる新生チームとのこと。代表はダンススクールの方で、今治市民皆で参加して盛り上がろうと、年齢・ダンス経験有無・男女問わずメンバーを募ったところ、3歳から大人まで148人の大人数連が出来上がったそうです。
「普段レッスンに通うのはちょっと…という方でも、おんまくだったら出てみたい!という意見が多く、ダンスに触れるきっかけを作ってもらったようでとても嬉しいです」(Do-c.DANCE CLASS代表河野さん)
うーん、見ていると参加したくなってきますね。
老若男女一緒に楽しむ「木山・今治お祭り音頭」
休憩をはさんだ後は「木山・今治お祭り音頭」。「木山音頭」と「今治お祭り音頭」という伝統的な踊りを交互に踊りながら練り歩きます。 こちらは、我らが今治タオル連も参加しています。今治タオル連は、今治タオル工業組合の組合員と、今治タオル青年部会を中心に結成されたチーム。
地域のお祭りなので、自分たちも積極的に参加して盛り上げたいと、2年前から参加しているのだとか。
「タオル業界の次世代を担う若手の集まりなので、業界の勉強などももちろんですが、こういった地域のための活動も、大切にしていきたいと思っています。こういう経験も、次の世代につないでいきたいですね。」(今治タオル青年部会中村会長)
中村会長は何と審査員も担当。「もちろん贔屓はしませんよ(笑)」とのことでした。
今治タオル青年部会 中村会長
青年部会も楽しく踊りました!
他にも、大きな山車から風船を配りながら歩く人、突然観客席から飛び出して踊りに参加する人など、なんだかとっても自由な感覚。
今治お祭り音頭はタオルをもって踊る振り付け
造船の町今治ならではのこんな山車も
見るだけでは物足りない!なんて方は、最後の総踊りに参加してみてもいいかもしれません。
みんなで一緒に思いっきり楽しむのが、おんまくの一番の魅力なんですね。
総踊りを盛り上げる踊り手たち
中四国最大規模!
10,000発の花火で祭りをしめくくる。
おんまくも2日目の夜を迎え、いよいよ祭りもクライマックスです。フィナーレを飾るのは、おんまくの柱その3でもある「おんまく花火」。今治市民にとっては、実はこの打ち上げ花火こそおんまくの代名詞。花火を打ち上げる今治港までの道のり(広小路会場と商店街会場)は、隙間もないほどたくさんの人が集まります。
「今年は例年にない猛暑で観客動員を心配していたんですが、夜になって涼しくなってきたので、安心しました。」
ほっとした表情で語るのは、今治タオル工業組合の井上理事長。今回おんまくの運営委員長を務めました。
今回のおんまく運営委員長を務めた今治タオル工業組合井上理事長
「そうですね。暑い中でしたが、大きな事故もなく楽しんでいただいて本当に良かったです。
実は今年は、6月末から7月初頭にかけての西日本豪雨災害で、今治も尾道も多大な被害を受けました。そんな中、このおんまくも開催すべきかどうかを検討する時期もありましたが、今こそおんまくの力で市民の皆さんを元気づける時だと、開催を決行してよかったです。町が元気になって、笑顔であふれるのはやっぱり嬉しいですね」(井上理事長)
そう、今年は水害に苦しめられた年。
そんななか、こうしておんまくが盛り上がって本当によかった、と改めてしみじみと感じました。
この花火は、瀬戸内の遠く離れた島々からも目にすることができる大きさです。きっと沢山の方々に笑顔を届けてくれることでしょう。
さて、いよいよ花火開催の時間です。10、9・・・と、会場に地響きのように響き渡る総勢20万人のカウントダウン。
今年もこの瞬間を待っていたという人たち全員の「ゼロ!」の合図と共に「ドォン!!」と最初の大きな1発が放たれます。
おなかに響くほどの音と、想像以上の迫力と美しさに、圧倒されて思わず言葉も飲み込むほど。会場に大歓声が響き渡ります。
さらに、音楽に合わせた打ち上げや、色や動きの変わる変化花火、0.3秒間隔に打ち上げられるスピード花火など、目の肥えた観客のためにも趣向を凝らした職人の技が光ります。
後半には、おんまくのためだけに3か月の期間を使って作られた特別な仕掛け花火も披露され、
色とりどりの輝きが今治の夜空を彩ります。
打ち上げ位置が目に見えるほどの距離で、これほどの規模の花火を見ることができるなんて、なんとも贅沢。見上げる人たちの顔も、自然と笑顔になっていました。
そして、おんまくの最後を彩るクライマックスは、圧巻の尺玉100連発。黄金の光に包まれて第21回今治市民のまつりおんまくは幕を閉じました。
花火も踊りも伝統も、毎年様々な改良を加えてお祭りとしての楽しさをレベルアップさせている「おんまく」。
そこには「今治の良さ」がぐっと詰まっています。
来年は、ぜひ参加してみてはいかがですか?