2018.07.03 |今治に行って、「マイやきとり屋」を探そう。|今治レポートVol.7

今治に行って、
「マイやきとり屋」を探そう。

今治のやきとりって、食べたことありますか? 実は今治は、人口に対するやきとり屋さんの数が日本一多い都市だったこともあるんです。そう、今治の人々は、名実ともにやきとり大好き市民なのです。そこで今回は、そんな今治のやきとりの魅力を取材してみることにしました。

「一番」が決まらない?
今治やきとりの豊富なバリエーション。

今治でやきとりを食べるとしたら、どこですか? と、地元の方に聞くと、

「やっぱりあの店が一番やと思う」
「そんなことないやろ、タレの深みはあっちの方が」
「いやいや皮のパリパリ感でいうと」

なんだか意見がまとまりません…。
そう。今治のやきとりと一言で言っても、タレの味、鶏肉の選び方、焼き方と様々なバリエーションがあり、今治市民の間でも好みによって意見がかなり分かれるのだそう。どこが一番というよりは、それぞれの「マイやきとり屋」があるというのが実態。なるほど。ますます興味そそられます。

そこで今回は、その中でも特に今治市民が「ここが一番!」という声が上がったお店3軒を取材させていただきました。

取材に同行していただくのは、前回に引き続き、アナウンサーの作道泰子さん。日々のお仕事やサイクリングの後にやきとりを食べることも多い作道さんにレポートしていただきます。

ビールが進む、進む。
パリパリの皮と辛めのタレ。
「はち八」

まず最初に訪れたお店は、地元でも人気のやきとり屋さん「はち八(はちはち)」。
市街地からは少し離れた場所にあり、店内はアットホームな雰囲気。

カウンター席に座ったところ、なんだか若大将がぶっきらぼうな感じで、ちょっと怖い。注文の仕方がなっちゃいない!とか怒られるんじゃないか…と考えたスタッフが、「あの、おまかせで注文した方がいいんでしょうか?」と質問すると、若大将は、

「いや、お好きなものを注文していただければいいですよ。おまかせって言われても、お客さんの好み知らないし」

とニコニコ。この若大将、話し始めてみると、かなり気さくな方だったのです。

「でもなんでも聞いていただければいいんですよ。旅行者の方は、今治はやきとりが有名だと聞いていらっしゃって、普通の串焼きをいきなり注文されたりするんですが、今治のやきとりは串焼じゃなくて鉄板焼きが基本なんです。もっと気楽に聞いてくれればいいのにと思います」(若大将)

お客さんの方から聞いてくれないと、もしかして地元の方が好きでやってるのかもしれないし、おせっかいになっちゃうとアレだし。と思って言えないという若大将。けっこう細やかな気遣いの方だったんですね!
そう。今治のやきとりは、串に刺したものではなく鉄板で焼き、さらに上からぎゅーっと鉄板でプレスして焼いたものが基本。

さらにその鉄板で焼いた皮焼きを、一人一皿食べるのが普通の注文の仕方。
え、一人一皿? 一皿が小さいんでしょうか。

いや、普通の一皿ですね…。これ、一人前ですか。なんだかこれだけでお腹いっぱいになってしまいそうなボリュームです。(もちろん、シェアして食べてもOKですから安心してくださいね)
ちなみにこちらは、はち八で人気のネギ入りの皮焼き。
ネギなしのものもありますが、ネギ入りだと甘みも入って絶妙の味わいになるそうです。皮は、カリッカリでパリパリなのがここの特徴。
タレはあまり甘くなく、今治の中では辛め。食べやすくどんどんお酒が進みます。

「ネギ入り、風味があっていいですね。この組み合わせ好きです!」(作道)

勢いづいた作道さんは、続いてもも焼きを注文。

「すごーい!ふっくらしてますねー!!」(作道)



外はパリパリ、中はふっくらしたもも焼き。とても美味しいです。いったいどんな鶏を使ってるんですか?

「その辺に売ってる普通の鶏です。ブロイラーですよ」(若大将)

ええー! 普通のブロイラーが、鉄板でこんなに美味しくなるんですね。

「はい、あと腕ね(笑)」

もっと褒めてくださいよ、と最後まで気さくな若大将。ごちそうさまでした。

ぷくぷくの皮に、
パンチの効いたせんざんき。
「山鳥」

さて、続いて2店目は「山鳥(さんちょう)」さんへ。こちらも地元の人気店。
お店は広々としていて、2階もある様子。我々は奥のお座敷に通されました。
まずは皮を注文。もちろんこちらも鉄板で焼くスタイルです。


あ、さっきのはち八とはまた違う美味しさですね。口に入れたとたん、
「ぷくぷくしてる!」と作道さんが叫んだほどふっくらした食感。

「少し肉がついていて、その肉が美味しい。それでいてやっぱりパリっとしています。タレはさっぱりめですね」(作道)

お話を聞いてみようと厨房を覗くと、おっと、大将がイケメンです。

この大将、この山鳥の二代目であると同時に、実は有名なプロライダー。
地元のライダーのガイドまでやっているとか。お忙しくてなかなかこうしてお店にいらっしゃるのはレアケース。普段は奥様が焼いてらっしゃいます。

この日、カウンターで「ここの皮が一番好きです!」とおっしゃっていたお客さんも、実は某自転車メーカーの社員さんだったりして、ここはライダー率も高そう。

そしてこの店長さんは作道さんとも自転車仲間で、番組も一緒にやっている間柄。この日も自転車のコースや番組収録の思い出話など、いろいろと話が弾んでいました。

さて、次にトライしたのは、せんざんき。えーと、せんざんきって? 出て来たのは、どう見ても唐揚げに見えますが…。

そう。
せんざんきというのは、今治では唐揚げのこと。

ここのせんざんきはニンニクが効いていてパンチがあります。ビールが進みますね。
続いて鳥ネギを食べる作道さん。

「鶏肉が中までふっくらしている。
旨味がしっかり閉じ込められてる感じです。
ネギの甘みと一緒に食べると、すごく美味しいです」
(作道)

なるほど。さっきのはち八もとっても美味しかったけど、ここはここでまた違った美味しさ。これは好みが分かれるのもわかる気がして来ました。

ではもう少し確かめるためにも、3店舗目に行ってみましょうか。
この山鳥さんのすぐ近くの「世渡(せと)」さんです。

愛すべき大将の
秘伝のタレとおもてなし精神。
「世渡」

ここは創業42年。かなりの老舗ですが、大将が個性的だということでも有名。「あの、取材で伺ったんですが…」と恐る恐る入店。

「ああ、はい。聞いてますよ。何人? ほら、座って。とりあえず食べてね」

お店に入るなり、いきなり大将の指示が。

「あ、いえ、作道さんと撮影用だけいただければ‥あとはスタッフが残り物を」
と言いかけたところ

「いいから、何人? とりあえず3品くらい作ればいいかな」

遠慮することも許さない雰囲気の大将。‥せっかくなのでいただきましょうか。内心スタッフたちは大喜びです。
まずはスタッフ全員分の皮焼き。もちろんこちらも鉄板焼きです。

お店は大きなカウンターと、数人で座れるテーブル席もあり、居心地のいい空間です。
さて、皮焼きが出て来ました。あ、なんですか、このタレは。甘くて、とっても美味しい‥。

「このタレがあればこそ、うちの店はここまで来れた」

と語る大将。14歳で今治のやきとり屋に入ったという大将は、そのお店を創業した店主にこのタレを教えてもらったのだとか。そのお店はすでになくなっているのですが、世渡で受け継いだこのタレは、メニューと同様に創業以来42年間変わっていないそうです。

ちなみにこの世渡の人気メニューは、もちろんこの皮が1番。
2番目は手羽先、3番目はレンコン(季節限定)だとか。ではその2つもいただきます。



手羽先は関節に包丁を入れてあり、手で割って食べられるようになっています。
レンコンは、2枚で挟んでいるのが特徴で、これも食べやすさを考えて工夫されたもの。通常の今治のやきとり屋のレンコンは1枚のものが多いのですが、この2枚で挟むスタイルも、最近この世渡から他のお店に広がっています。
「食べやすさも美味しさの管理だから」というのが、大将の考え方。そしてお味ももちろん絶品。

「手羽先、骨周りが美味しくて、骨ギリギリまで食べたくなります。
レンコンはシャキシャキ。中のつくねの味付けがいいですね」(作道)

続いてピーマンの肉詰めに、チキンステーキ(もも肉のステーキ)。…あれ、品数が増えてる? どうやら気分の乗った(?)大将がどんどん料理を作ってくださっています。大将、やさしいんですね。

「いえいえ、相手にもよるんですよ。すぐ『帰れ』なんて言うから、ネットでは『個性的な大将』、なんて書かれちゃったり」
と奥様がおっしゃると、

「悪口書かれた方がええ。食ってさっさと帰ればいい」
と大将。でもなんだかそんな毒舌もクセになりそうな愛すべきキャラクター。
実は料理への愛とおもてなし精神のあふれる素敵なお店でした。ごちそうさまでした。

人気3店舗をまわってわかったことは、たしかにこれは好みが分かれるということ。実際、一緒にまわったスタッフの中でも、意見が分散。皮のパリパリ感、肉の厚み、タレの味、そして大将のお人柄。それぞれが味わい深く、ファンになってしまうようなポイントがありました。じゃあ他の店はどうなんだろう? と、ますます知りたくなってしまいます。

そしてもうひとつ今治やきとりの素晴らしい点は、お会計がリーズナブルなこと。たらふく食べても、一人2,000円ほど。これは今治の方々が通ってしまうのもわかります。
みなさんもぜひ実際行って、マイやきとり屋さんを探してみてくださいね。
はち八(はちはち)
市街地から少し離れた場所にある、アットホームな雰囲気のはち八さん。
今治の中では辛めのタレで、パリッパリの皮が特徴的。お酒の進む味です。
おすすめは特徴的なネギ入りの皮焼きで、甘みも入った絶妙な味わいが魅力。
住所
:愛媛県今治市郷本町2-3-8 [ MAP ]
電話番号:0898-32-8281
営業時間:17:00 ~ 23:30(22:30ラストオーダー)
定休日:毎週月曜日(臨時休業あり)
山鳥(さんちょう)
市街地にある山鳥さんは、2階席もある広々としたお店。
さっぱりめのタレと、ふっくらとしたお肉の付いた皮が他店とは一味違う食感。
プロライダーの大将がいる、自転車乗りにも人気のお店です。
住所
:愛媛県今治市末広町1-4-7 [ MAP ]
電話番号:0898-22-7188
営業時間:17:00 ~ 23:00(22:30ラストオーダー)
定休日:毎週月曜日
世渡(せと)
創業42年の老舗のお店である世渡さん。
甘みのある、何とも言えない独特のタレでファンが多い名店。
個性的な大将との粋な会話が楽しめます。皮はもちろん、季節限定で人気のレンコンもおすすめ。
住所
:愛媛県今治市黄金町1-5-20 [ MAP ]
電話番号:0898-31-1614
営業時間:17:00 ~ 22:00(21:30ラストオーダー)
定休日:毎週月曜日・第4火曜日(臨時休業あり)

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