アート×独自技術で、
“キラキラ”輝く
タオル誕生!

アーティスト江原さんの“キラキラ”表現が、なんとタオルに。
それを実現した技術とは?
江原 彩子
Saeko Ehara
2010年にオランダのハーグ王立美術学院(KABK)を卒業後、様々なコンサート会場でVJとして活動。2022年以降は AIとジェネラティブ・アートを組み合わせた作品を中心に発表する。幼少期に触れたキラキラとしたカードや、ガラスなど透明な小物の記憶からインスピレーションを得て、“キラキラ”した独自表現を自身の作品スタイルとしている。
これまでに「Signage exhibition, DIFC」(ドバイ、アラブ首長国連邦、2024)、「Vivid Sydney, Darling Harbour」(シドニー、オーストラリア、2024)「AMBIENT KYOTO」(京都、2023)、「Immersive Museum」(日本橋、2023)、「Bright Moments Tokyo」(渋谷、2023)など国内外で作品を発表。

アバターを操作して、仮想空間のギャラリー内を自由に歩き回れる「今治タオル デジタルアートギャラリー」。
2024年5月にオープンした「今治タオル デジタルアートギャラリー」。
ここでは、今治タオルへの愛を持ったアーティストのデジタル作品を展示しています。
今回ご紹介する作品は、「今治タオルを手にしたときの、雲に触れているような感覚を表現しました」という江原彩子さんのデジタルアート。
世界に“キラキラ”な作品を
発表してきた
江原 彩子さん
たくさんの粒子のようなものが軽やかに動き、天使のような少女の翼がキラキラと輝く、ずっと眺めていたくなる美しさがあります。

「今治タオル デジタルアートギャラリー」内で
展示されている、江原 彩子「Message」。
コンサート会場などで、音楽に合わせて制作した映像を流すVJ(ビジュアルジョッキー)の経歴を持つ江原さん。彼女の作品の特徴は、このような“キラキラ”とした表現。デジタルサイネージやインスタレーションなどを通して、“キラキラ”を追求しています。
そんな江原さんが、デジタルアートギャラリー内だけでなく、なんと実際にタオルで作品制作をされたようです。
いったい、タオルでどのように“キラキラ”が表現されるのでしょうか?江原さんご本人に、お話を聞かせてもらいました。

「Signage exhibition, DIFC」
(ドバイ、アラブ首長国連邦、2024)

「Artificial Dreams II, Grand Palais Immersif」
(パリ、フランス、2025)
まずは、コラボレーションの経緯について。タオル作品の話が来たとき、どのように思われましたか?

インタビューに応じてくれた江原さん。
1つ1つの質問に明快に答えます。
「私の作品とぜひコラボレーションしたいというお話をいただいて。これまでプリント作品をアートフェアで制作したことはあったのですが、ベースはデジタルなので、デジタルとタオルでどんなものが出来上がるのか最初はイメージがまったくつかめていませんでした」
なるほど、タオル作品は初の挑戦だったのですね。
ちなみに就寝時に今治タオルを愛用しているという江原さん。枕の上に敷くことで快適に眠れているそうです。
タオルでの作品化を支えた、
メーカー藤高の「五彩織り」
そんな江原さんの作品を、実際にタオルという形にしたのが今治タオルメーカーの藤高。
この出会いが、感動的な作品を生み出すことになります。
その後、藤高の「五彩織り」という技術が用いられたタオルを実際に目にした江原さんは確信します。
「絵画作品を精密にタオルで再現していて、これはすごい技術だと感じました。実物を見て、そこで初めてイメージが湧いてきて、ぜひやらせてくださいとお願いしました」


藤高が手掛けた、クリムトの傑作『農家の庭』を五彩織りで再現したタオル。
遠くから見ると絵画のように(左)、近くで見ると異なる色の糸で細かく織られているのがわかります(右)。
五彩織りは、赤、青、黄、黒、白の5色に染められた糸を使い、ジャカード織りを施すことで実現します。
藤高が約7年もの時間をかけてようやく完成した、高い技術を必要とする織り方です。
通常のタオルに比べて約2倍まで目が詰まった織機を使い、タオルに織り上げることで、少し離れたところから見るとまるで絵画や写真のようなフルカラータオルができるのです。

技術担当の宇都宮さんをオンラインでつなぎ、江原さんと藤髙 小夜子さんの3人での打ち合わせ風景。

今治にいる宇都宮さんに、画面越しに絵柄のイメージを伝えている様子。
そして今回、江原さんの作品のよさをうまく活かすにはどうすればいいか、藤高のほうでも考えました。
技術担当の宇都宮 誠さんの長年の経験から、5色の糸に加えて緑色も採用。

江原さんの作風をタオルでも活かすため、5色の糸に加えて緑色も取り入れることに。
さらに江原さん特有の“キラキラ”感を出すために、横糸には全面的に銀の糸を使い、白の糸にラメ糸という特殊な糸を絡ませました。
このようなアレンジによって、タオルの光が当たった箇所が“キラキラ”と輝いて見えるのでは……。
FUJITAKA TOWEL GINZA取締役の藤髙 小夜子さんは今回の取り組みについて次のように話します。
「ヨコ糸全面に銀糸を採用し、さらにパイルにもラメ糸を用いることは初めてで、藤高にとってもチャレンジでした。
成功すれば、五彩織りの技術がもう一段アップすることにもつながります」
初めてタオル作品をつくる江原さんと同じように、藤高にとっても今回のコラボレーションは冒険だったのですね。
はたしてどんな仕上がりになるのか、ドキドキしてきます。
日本のものづくりの
すごさに感動!
ついに誕生した
“キラキラ”光るタオル

今作のベースになった、クリムト作品のタオルを購入した江原さん。
藤高のお店で生地や糸を見ながら打ち合わせを重ねた江原さん。藤高で過去に手掛けたクリムト作品のタオルを購入し、撮影した画像をベースにAIを駆使したユニークな手法で今作の絵柄をつくっていきました。
その完成データを藤高本社に送ると、最終調整に向けて、タオルを実際に織り上げる現場である愛媛県今治市へと江原さんは向かいます。
現地に到着した江原さんが最初に上がったテストサンプルを目にしたとき、衝撃を受けたと言います。

最初に上がったサンプルのタオルとご対面。この時点で江原さんの想像を超えていました。
「『すごい!』の一言でした。通常のタオルと違って銀糸やラメ糸が使われていて、データだけではなくタオルでも“キラキラ”した表情が出来上がるんだと。日本のものづくりのレベルの高さを実感しました」
上がったサンプルの出来に感動していた江原さんですが、そこからの最終調整がラストスパート。この柄はつぶれてしまう、色がうまく出ていないなど、上がってきたサンプルを見ながらデータ調整を繰り返します。

制作現場である藤高本社に足を運び、五彩織り用の特殊な機械で織られていく様子を確認。

花の絵柄も、よく見ると細かな糸の集合であることがわかります。
繊細な技術に驚きます。
また、洗い終えた後に絵柄がどれくらい縮むのか、ズレは出てこないのか、そういったことを計算しながら江原さんと宇都宮さんはデータを調整していきます。考えただけで気の遠くなりそうな作業です。

江原さんと宇都宮さん。
隣り合って意見を出し合うことで、難しい仕上げの調整もスムーズに進みます。

2泊3日の今治滞在という限られた時間の中で、集中して最終調整を行いました。

いくつものサンプルを比較しながら色などをチェックしています。
このときの作業を通して、江原さんはVJとしての活動を思い出したと語ります。
「データからタオルに出力する作業では、VJをしていた経験が活かされました。10年ほど前だとVJの映像の解像度も低いので、パソコン上では綺麗に見える絵柄でも現場で投影してみると画質が粗いことも多くて。実際に出力してみて、そこからよく調整していたので、当時の感覚が蘇ってきました」

日本の象徴である菊から着想を得て、キラキラとしたガラスの花を描いた作品『Crystal Chrysanthemum』
(約92×92cm)。

江原さんの“キラキラ”も綺麗にタオル地で表現されています。
こうしてふたりでキャッチボールを繰り返すことでタオル作品の精度はみるみる上がっていきます。
10枚以上ものサンプルを出し、いよいよ作品が完成。
江原さんのアーティストとしての感性と、藤高の技術が結実したタオル作品。一般的なタオルの概念を覆す、素晴らしいものが出来上がりました。絵画のようでありながら、光に照らされると美しく煌めく、それがタオルで表現されているのです。

一般発売を予定している『Mikan Jewels』(約92×92cm)。
店頭で実物を見てみたいですね。
完成した作品のうち、『Crystal Chrysanthemum』と名付けられた菊の花をモチーフとしたタオルは、スイス・ベルンのギャラリー「Galerie Glaab」(10/2〜10/18)やチューリッヒで開催されるアートフェア「Art Salon Zurich」(10/24〜10/26)にて展示・販売予定とのことです。
さらに、今治市が位置する愛媛と言えば……ということでミカンがモチーフのタオル『Mikan Jewels』は、なんと一般販売するそうです!
11月13日より「FUJITAKA TOWEL GINZA」「今治タオル 本店」ほか各店舗にて、16,500円(税込)で限定40枚を販売予定。
ぜひ、タオルで表現された“キラキラ”をその目で確かめてみてください。
今治タオル デジタルアートギャラリー
https://www.imabaritowel.jp/digital-art-gallery
関連記事
「デジタル×アートの力で、今治タオルの魅力を世界へ。今治タオル デジタルアートギャラリー」
https://www.imabaritowel.jp/imabari_life/report/imabari_life/report7649
江原 彩子(公式サイト)
https://skohr.works
(株)藤高(公式サイト)
https://fujitaka.co.jp
Galerie Glaab 公式サイト
https://www.galerieglaab.com
Art Salon Zurich 公式サイト
https://www.artsalonzurich.com/en/welcome